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【報告書】第21回HHPセミナー

平成27年10月27日 (火)

特別経費プロジェクト拠点代表 征矢英昭 教授

 所属:人間総合科学研究科

 氏名:曹 銀行

 

21 HHP セミナー報告書

 

 

Ⅰ.セミナー概要

本セミナーでは、講演に先立ち西保 岳 教授からNicola Gerrett博士の紹介 (ヒトの温熱生理学や環境人間工学、衣服科学といった研究領域で著名なラフバラ大学のHavenith教授のもとで学位を取得し、その後ウースター大学の講師として活躍されていること、現在は、日本学術振興会外国人特別研究員として来日しており、1年間、神戸大学で研究を行う予定であること) と招聘の意義の説明がなされた。その後、「The interaction between physiological and perceptual responses -環境刺激に対する生理応答と知覚応答との関連-」のセミナータイトルで講演が行われた。

 

Ⅱ.開催概要

主催:文部科学省特別経費プロジェクト

「ヒューマン・ハイ・パフォーマンスを実現する次世代健康スポーツ科学の国際研究教育拠点」

筑波大学大学院人間総合科学研究科 体育科学専攻・コーチング学専攻・スポーツ医学専攻、システム情報工学研究科、知能機能システム専攻

日 時: 平成27年10月27日 (火) 17:00-19:00

 場 所: 筑波大学体芸棟5C606

 講 師: Nicola Gerrett博士 (University of Worcester; JSPS overseas research fellow, Laboratory of applied Physiology, Graduate school of Human Development and Environment, Kobe University)

 参加人数:20名

 

Ⅲ.講演概要

セミナータイトル:「The interaction between physiological and perceptual responses

~環境刺激に対する生理応答と知覚応答との関連~」

○講演内容

最初に、暑熱環境下での体温調節反応は、①行動性の体温調節と②生理学的な体温調節反応の2種類が存在すること、特に行動性の反応には温度感覚が非常に重要であること、その一方でヒトの行動性体温調節に関する研究は非常に限られていることを説明した。その後、ヒトの温度感覚について調べたいくつかの研究を紹介した。例えば、女性における温熱 (40℃) 及び寒冷刺激 (20℃) に対する主観的温度感覚を安静時と自転車運動時 (30%最大酸素摂取量強度) に測定した結果、安静時および運動時の寒冷刺激に対する温度感覚指数は温熱刺激に対するそれよりも高値を示し (より刺激を感じている)、 また、運動時の寒冷および温熱刺激に対する温度感覚指数は安静時のそれよりも低値を示したことから、女性は温熱刺激よりも寒冷刺激に対してより敏感であること、またそれらの感覚は安静時よりも運動時に鈍くなることを示唆した。さらに、男性および女性被験者における温度刺激 (20、40℃) に対する温度感覚を安静時および運動時に測定したところ、温度感覚は安静および運動時のどちらにおいても、男性よりも女性被験者で高値を示したことから、温度感覚には性差があり、男性よりも女性の方が温度刺激に対して敏感であることを示唆した。また、これらの実験から、温度感覚には部位差があることも示唆し、頭部、胴体部、そして四肢と低下していくことを報告した。

次に、2種類の方法【①発汗量測定用カプセルを用いたもの、②皮膚電気伝導度(Galvanic skin conductance: GSC)を用いたもの】で測定した皮膚表面の湿り度合いと温度感覚の関係性について調べた実験を紹介し、皮膚の湿り度合いと温度感覚には正の相関関係が見られたこと、皮膚の湿り度合いに対して温度感覚が上昇し始める閾値が見られ、その閾値は胴体部から四肢に向かうほど低いことから、皮膚の湿り度合いは温度感覚に影響を与えること、またそれらには部位差があり、胴体部よりも四肢の方が不快感を感じやすいことを報告した。

運動生理学・環境生理学分野の研究を行っている教員・大学院生をはじめ、参加者は特に発汗とストレスへの反応にかかわる要素や暑熱に対する適応等に興味を持ち、活発な質問や議論が交わされた。