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【報告書】第24回HHPセミナー

第5回 HHP cafe報告書

 

Ⅰ.セミナー概要

本セミナーでは、講演に先立ち征矢英昭 教授から Wook Song 博士(Professor, Seoul National University, Korea)の紹介と招聘の意義の説明がなされた。その後、「The beneficial effects of elastic band exercise training for frail and sarcopenic elderly」のセミナータイトルで講演が行われた。質疑応答では、バンドトレーニングの効果やそのメカニズムに関する発問が起こり、活発に議論された。

 

Ⅱ.開催概要

主催:文部科学省特別経費プロジェクト

「ヒューマン・ハイ・パフォーマンスを実現する次世代健康スポーツ科学の国際研究教育拠点」

筑波大学大学院人間総合科学研究科 体育科学専攻・コーチング学専攻・スポーツ医学専攻、システム情報工学研究科、知能機能システム専攻

日 時: 平成28年2月12日 (金) 17:00-18:30

 場 所: 筑波大学体芸棟5C606

 講 師: Wook Song 博士 (Professor, Seoul National University, Korea)

 参加人数:30名 

 

Ⅲ.講演概要

セミナータイトル:「The beneficial effects of elastic band exercise training for frail and sarcopenic elderly」

 

○講演内容

はじめに本講演の概要の説明があった。本講演は、サルコペニア/フレイルについて、レジスタンスバンドトレーニングとその介入についてお話が進められた。

まず、導入はサルコペニアとフレイルの話であった。サルコペニア (Sarcopenia) は筋量の減少や筋機能の低下が起こる病態である。一方、フレイル(Frailty)とは、加齢に伴う生理的予備力が低下する病態 (虚弱) のことであり、一要因としてサルコペニアも含まれる。これらの病態が引き起こされるメカニズムは複雑であり、また個人差が大きい。しかし、これまでの研究からいくつかわかることがある。加齢によって真っ先に量が減少する臓器はエネルギーコストが大きい骨格筋であり、一方で増加するのは脂肪である。この筋量の減少を筋繊維タイプ別に分けてみてみると、TypeⅠ(遅筋繊維) よりも、TypeⅡ(速筋繊維) の減少が大きい。膝伸展筋トルクや握力で評価することができる筋機能は、この加齢に伴う脂肪量増加、筋量減少によって低下し、ある閾値を超えてしまうとサルコペニアという病態となる。一度その閾値を超えて筋機能が低下してしまうと回復させるのは難しいため、加齢による低下を少しでも遅らせて病態を予防することが重要となる。また、サルコペニアはフレイルと身体機能障害を引き起こすという点で共通点をもち、この二つは悪循環を生むことが知られている。高齢化社会が加速する昨今、加齢に伴うこれら病態の予防策が求められている。そこで共通点である身体機能障害に対するアプローチが効果的であり、運動を挙げることができる。

では具体的に、このような病態を予防・改善する運動とはどのようなものかという話へ移った。レジスタンストレーニングは筋量増加、筋力増加、筋持久力増加などといった様々な効果が期待できる。特にここまでの話で鍵となってきた筋量増加は有酸素運動では難しく、レジスタンストレーニングならではの効果である。しかし重りを使ったレジスタンストレーニングは怪我のリスクが高く、高齢者には向いていない。そこで今回提案されたのはゴムバンドを用いたレジスタンスバンドトレーニングである。これはゴムの弾性を負荷として利用するトレーニングであり、フリーウエイトと比較し安全でどこでもでき、様々な筋を対象にトレーニングを行うことができる。Song 博士のHealthy Education and Happy Aging (HAHA) プロジェクトでは健康教育と運動プログラムの組み合わせによる介入がおこなわれ、身体機能や認知機能への効果を確認した。運動プログラムでは、ゴムバンドを用いて高い強度ではなく高いスピードで筋パワーを高めることを主眼に置いており、高強度低スピードでおこなうトレーニングよりも身体機能、認知機能に対して効果的であることを確認した。

運動生理学・環境生理学分野の研究を行っている教員・大学院生をはじめ、参加者は特にバンドトレーニングの介入研究に関して興味を持ち、活発な質問や議論が交わされた。

 

平成28年2月29日 (月)

所属:人間総合科学研究科

氏名: 福家健宗