外部リンク

【報告書】第13回HHPセミナー

13 HHP セミナー報告書

 

 

Ⅰ.セミナー概要

本セミナーでは、講演に先立ち西保 岳 教授からSean R. Notley 氏 (Ph.D. student, University of Wollongong, Australia)の紹介(体温調節を主体とした環境生理学および産業生理学研究の世界的権威である Taylor 教授の研究室の博士後期課程の学生であること)と招聘の意義の説明がなされた。その後、「An interaction of morphology in the modulation of evaporative heat loss during exercise.」のセミナータイトルで講演が行われた。質疑応答では、形態の違いによって熱放散反応に差が生じるメカニズム等に関する発問が起こり、活発に議論された。

 

Ⅱ.開催概要

主催:文部科学省特別経費プロジェクト

「ヒューマン・ハイ・パフォーマンスを実現する次世代健康スポーツ科学の国際研究教育拠点」

筑波大学大学院人間総合科学研究科 体育科学専攻・コーチング学専攻・スポーツ医学専攻、システム情報工学研究科、知能機能システム専攻

日 時: 平成27年3月11日 (水) 15:00-16:00

 場 所: 体育科学系棟 B510

 講 師: Sean R. Notley 氏(Ph.D. student, University of Wollongong, Australia)

 参加人数: 30名 

Ⅲ.講演概要

セミナータイトル:「An interaction of morphology in the modulation of evaporative heat loss during exercise.」

 

○講演内容

最初に、Notley 氏が所属するUniversity of WollongongのTaylor 教授の研究室(温熱生理学)の概要(最近の研究内容や研究施設について)の紹介を行った。その後、自身の博士後期課程での研究内容[形態的な違い(体重あたりの体表面積の違い)によって、運動時における発汗反応や身体からの熱の産生・放散のバランスがどのように異なるのか]における4つの実験(実験1:形態と体温調節機能、実験2:性差と体温調節機能、実験3:暑熱順化と形態、実験4:間接的熱量測定法と直接的熱量測定法)について概要を説明し、特に実験1および実験3の詳細について解説した。

一般的に、ヒトの体温は1) 体表と外界との熱交換といった受動的なシステムや2) 発汗や皮膚血流量の変化などといった能動的なシステムによって調節される。発汗や皮膚血流量の変化による体温調節反応には大きな個人差があり、Notley 氏の研究は特にその個人差と身体の大きさの違い、性別の違いおよび暑熱順化の程度の違いとの関係に焦点を当てたものであることを説明した。実験1は、熱放散反応やそれに伴う体温変化が体表面積や体重に影響を受けることから、体表面積と体重の割合の違いによって発汗や皮膚血管拡張反応などの体温調節反応が異なるという仮説を検証したものであり、実際に、全被験者において産熱量が同程度になるような運動を行った場合、体重あたりの体表面積が大きい者ほど発汗率は低く、皮膚血管拡張反応は大きくなるというデータを示し、形態的な違いが体温調節反応の個人差に関与することを示唆した。実験3では、暑熱順化によって生じる熱放散反応の増大の程度が形態の違いによって影響を受けるという仮説を検証しており、その結果、体重あたりの体表面積などの形態的な違いにかかわらず暑熱順化によって熱放散反応の増大が起こったものの、その程度は仮説に反して形態の違いによる影響は受けなかったことを説明した。

運動生理学・環境生理学分野の研究を行っている教員・大学院生をはじめ、参加者は特に形態の違いによって熱放散反応に差が生じるメカニズムや発汗反応と皮膚血管拡張反応との関連等に関して興味を持ち、活発な質問や議論が交わされた。

 

平成27年4月30日 (木)

所属:人間総合科学研究科

氏名:藤本 知臣