外部リンク

【報告書】第3回HHPセミナー

I. 開催概要

日時:2014年6月30日(月)17:00-18 :30 

会場:筑波大学体育・芸術専門学群棟 5C213

世話人:西保 岳(筑波大学体育系教授)

講演者:岡崎和伸博士(大阪市立大学 都市健康・スポーツ科学研究センター、大阪市立大学大学院 医学研究科運動環境生理学)

講演題目:血液~持久性パフォーマンス向上のカギ~

 

II. セミナー概要

本セミナーでは、講演に先立ち西保 岳 教授から岡崎 和伸 博士(大阪市立大学 都市健康・スポーツ科学研究センター、大阪市立大学大学院 医学研究科運動環境生理学 准教授)の紹介(筑波大学大学院 体育研究科 修士課程、信州大学 医学研究科 スポーツ医科学 博士課程を経て、アメリカ運動環境生理学研究所にて高所トレーニング研究の世界的権威であるBenjamin D. Levine 博士の下で研究活動を行っていたこと、また、特に運動トレーニング、暑熱環境、低圧低酸素(高地)環境に対する循環・体温調節機能の改善機構等に関する研究に従事していること等)と招聘の意義の説明がなされた。その後、「血液~持久性パフォーマンス向上のカギ~」のセミナータイトルで講演が行われた。質疑応答では、トレーニングに対する血液量増加反応や高所におけるトレーニング効果等についての発問が起こり、活発に議論された。

 

Ⅲ.講演概要

持久性パフォーマンスは、およそ3つの生理学的要因(①最大酸素摂取量、②乳酸性作業閾値、③ランニングの経済性)によって規定されること、さらに、持久性パフォーマンスが非常に高い東アフリカ人のマラソン選手と、それよりは持久性パフォーマンスが低い日本人のマラソン選手では、最大酸素摂取量に大きな差は見られない一方、東アフリカ人のマラソン選手のほうが日本人のマラソン選手と比べ、乳酸性作業閾値およびランニングの経済性が高いことを説明した。更に、血液が持久性パフォーマンスに及ぼす影響に注目して研究を行った結果、東アフリカ人のマラソン選手は日本人のマラソン選手よりも赤血球容積が小さい(血液粘稠度が低い)傾向にあることを示した。

血液量と最大酸素摂取量との間には強い関連があることから、血液量増加により持久性パフォーマンスが向上する可能性があることを述べ、それに関する研究結果について紹介した。例えば、トレーニング直後にタンパク質と糖質を摂取することによって血漿量が増加し、これを継続的に行うことによって、同一強度における運動時の1回拍出量の増加や心拍数の低下が起こることから、この方法が持久性パフォーマンス向上のために効果的である可能性を示唆した。

最後に、高所トレーニングに関する基礎的な知識を説明するとともに、Living High Training Lowを提唱した高所トレーニング研究の世界的権威であるBenjamin D. Levine博士の過去の研究データをもとに、効果的とされる高所トレーニングの条件(滞在高度・期間等)やその効果の個人差等について解説した。

運動生理学・環境生理学分野の研究を行っている教員・大学院生をはじめ、高所トレーニングを行う予定である陸上部長距離部門の学生も本講演に高い関心を持って傾聴していた。

 

平成26年6月30日

人間総合科学研究科(HHP リサーチアシスタント)  

藤本 知臣