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【報告書】第1回HHPセミナー

I. 開催概要

日時:2014年5月2日(金)17:00-18 :30 

会場:筑波大学体育・芸術専門学群棟 5C108(会議室)

世話人:征矢英昭(筑波大学体育系教授・HHPコアリーダー)

講演者:勝田茂(筑波大学名誉教授・医学博士)

講演題目:超高齢アスリートの体力とライフスタイル

 

II. セミナー概要

本講演は征矢英昭HHPコアリーダーによる講演者紹介のもと、定刻に開始された。講演は会場にて配布されたレジュメに沿って行われ、①高齢者と競技スポーツ②高齢アスリートの体力③10年後の体力④生涯の健康体力づくりを目指しての4テーマについて講演が行われた。 

①については高齢者スポーツの行い方(レクリエーショナル/競技志向の程度)、高齢アスリートの年齢構成および高齢アスリートにおけるトレーニングの頻度などが示され、高齢者アスリートを取り巻く現状確認が行われた。また②については加齢にともなう筋力の変化(筋横断面積の変化および筋線維数の変化など)をはじめとしたデータが示され、とりわけ「高齢者の筋トレーナビリティTrainability」として次の二つのことが指摘された。(1) 筋力トレーニングを通じ、(a)筋力の増加」が十分に期待できる(b) 筋力トレーニングにより高齢者でも筋肥大が生じる。また、(2)持久性トレーニングにより(a)酸化系酵素活性が上昇する (b) 毛細血管数が増加することが示された。これらのことをふまえ、「トレーニングの効果は、負荷、頻度、期間に依存する」ことが指摘された。 

③については超高齢アスリート(対象年齢73-96歳)における身体能力(等速性筋力、大腿四頭筋横断面積など)および体力(長座体前屈、握力、垂直跳びなど)における経年変化10年のデータが示された。これらのデータにもとづき、「高齢者のからだづくり」としては①筋力(スクワット、腹筋といった脚筋力・腹筋力)を高めること②開眼片足立ち、両足つま先立ちの訓練を通じて「バランス能」を高めること、歩幅や歩数などに特徴づけられる歩行能力を高めるべきことが指摘された。 

④については「3つのすすめ」として(1) セカンド・スポーツのすすめ(2) 運動メモのすすめ (3) 青年期体重維持のすすめ――20歳代前半+10%以内――が指摘された。とりわけ92歳で世界マスターズ競技会における金メダル獲得、ならびに95-97歳にかけて46度の世界記録を樹立した長岡三重子氏の事例を踏まえ、高齢者における適切な筋力トレーニングの意義が講演者によって強調された。 

講演に引き続く質疑応答においては、フロアからの活発な討議が行われた。そのうちには高齢に至ってからのスポーツ中の怪我とその予防策について問いが提起され、回答として「あまり重い負荷をかけないこと」、ならびに「高齢者自身の自覚的な予防措置の必要であること」が講演者から指摘された。 

総括的に言えば、本講演は主に自然科学の視点から高齢者アスリートにおける体力およびスポーツライフの現状と課題、さらに適切な筋力トレーニングの必要性が語られたものである。しかし講演では高齢者が「生きがい」としてもスポーツに取り組む姿勢が多くのデータや事例から示された。それゆえ本講演はスポーツの有する多面的な魅力を考えるきっかけとしても高い意義を有するものであったと結論できる。

 

平成26年5月3日

HHP研究員   

林 洋輔