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【報告書】第4回HHPセミナー

I. 開催概要

日時:2014年7月22日(火)15:30-16 :30

会場:筑波大学体育・芸術専門学群棟 5C406

参加人数:40名

世話人:征矢英昭(筑波大学体育系教授・HHPコアリーダー)

講演者:Michael A. Yassa(Assistant Professor, Neurobiology and Behavior University of California, Irvine, CA)

題目:Brain mechanisms underlying learning and memory ~ human hippocampus imaging by high-resolution fMRI ~

 

II. セミナー概要

本講演は征矢英昭HHPコアリーダーによる講演者紹介のもと、定刻に開始された。

講演ではまず、エピソード記憶の神経メカニズムとして計算論的立場から提唱されたパターンセパレーション・パターンコンプレションの概念について説明がなされた。続いて、海馬の詳細な神経ループについて概説し、パターンセパレーションを担う神経基盤として歯状回~苔状繊維~CA3の重要性が指摘された。さらに、歯状回はドメイン非特異的にパターンセパレーション機能を担うことが示された。すなわち、内側側頭葉レベルでは、物体の空間的な情報(WHERE)のパターンセパレーションには海馬傍皮質及び内側嗅内皮質、物体の形情報(WHAT)のパターンセパレーションには嗅周皮質及び外側嗅内皮質がそれぞれ重要であるが、どちらの情報も海馬歯状回~CA3に達し、最終的にはここでパターンセパレーションが完結するという仮説を支持するデータがfMRI研究から示された。 

1つ目の話題として、一過性に覚醒度を高めることがパターンセパレーションに与える影響についての研究が紹介された。ここでは、覚醒度を高める刺激としてカフェインや情動誘発画像を与えると、パターンセパレーションが必要な記憶課題の成績が向上することが示され、運動にも同様の効果がある可能性が示された。 

2つ目の話題として、情動がパターンセパレーション機能に及ぼす影響を検討した研究が紹介された。ネガティブな情動を引きおこす写真を提示した場合には、Neutralな写真を提示した場合よりも課題成績は悪化し、同時に扁桃体の活動が増加することが示され、扁桃体がモデュレーターとして機能している可能性が示唆された。また、うつ病患者では、ネガティブな写真に対する歯状回・CA3の活動は低下する一方、扁桃体の活動増加は健常者よりも顕著であるという最新の実験データも示された。 

3つ目の話題として、加齢に伴うパターンセパレーション機能の変化に関して話された。軽度認知症(MCI)では、パターンセパレーション機能が低下しており、その背景には歯状回・CA3の過活動が関与している可能性が示された。さらにlevetiracetam投与によりこの過活動を抑制すると、パターンセパレーションの課題成績が改善されたことが示された。 

講演後、過活動の解釈の問題に関する質問や、ドーパミンが海馬を中心とした神経回路におけるドーパミンの役割に関する質問などがなされ、活発な意見交換がなされた。本セミナーには、生命環境科学研究科や物理学類等、体育以外の所属からも参加者が多く、講師であるYassa博士の研究が世界的に注目されていることが確認できた。体育スポーツ科学と他の専門領域との融合という視点からも本講義は大変有意義なものであった。

平成26年7月22日

HHP リサーチアシスタント

諏訪部 和也